尿道脱とは、尿道の粘膜が陰茎の先端から飛び出してしまう病気です。特に、若いオス犬の短頭種(ブルドッグなど)でよく見られます。原因としては、過剰な性的行動、尿路感染症、尿路結石、前立腺機能不全、発育異常などがいわれていますが、正確な原因はわかっていません。症状としては、陰茎の先が赤く腫れて出血したり、血尿やおしっこのしづらさが見られることがあります。去勢していない犬では、発情や興奮によって悪化することもあります。
◯治療法について
尿道脱は、手術で治すのが基本です。お薬だけで良くなることは少なく、放っておくと再発や悪化につながります。主な手術方法は次の通りです。
- 飛び出した部分を切り取って尿道を整える手術(尿道脱切除術)
→ 一般的に最もよく行われ、再発が少ない方法です。 - 飛び出した部分を陰茎の中に縫い付けて固定する手術(尿道固定術)
→ 単独では再発が多めですが、切除手術と組み合わせると再発を防ぎやすくなります。
当院では、再発リスクの少なさから尿道脱切除術を行っています。
また性的な興奮は術後の腫脹と出血を増加させるため、去勢手術を行っていない患者さんには同時に行うことを推奨しています。
◯手術後の見通し
- 適切に手術を行えば、多くの犬は良好な経過をたどります。
- 性的な興奮は術後の腫脹と出血を増加させるため、同居もしくは近くに雌犬がいる場合には隔離していただく必要があります。
- 手術後しばらくは出血や腫れが見られることがありますが、多くは一時的で落ち着きます。
- 長期的には、しっかり手術・管理を行えば、普段通りおしっこができて快適に過ごせるようになります。
- 何度も再発を繰り返す場合には最終的に陰茎の切断と尿道造瘻術(尿道口を他の部位に移す手術)が必要になる場合が稀にあります。
今回当院を受診された尿道脱の患者さんをご紹介します。
陰茎先端からの出血を主訴に当院を受診されました。この患者さんは未去勢であり、発情行動(腰振りんなど)が出るたびに出血していました。陰茎先端は、粘膜が反転し腫瘤状になっており、そこから出血が認められました。

まずは内科治療(抗生剤、止血剤、消炎鎮痛剤)を行い、反応をみたところ症状が落ち着いたため経過観察を行いました。
2ヶ月後、尿道脱が再発したため、飼い主さんと相談の結果、手術を行うことになりました。
手術は尿道粘膜の反転部を切除し、尿道粘膜と陰茎を縫合しました。また同時に去勢手術も実施しました。



術後すぐは時折出血が認められましたが、現在は良好に経過しています。
尿道脱は見た目に驚かれる病気ですが、適切な手術で治すことが可能で、予後も良好です。短頭種や若いオス犬で見られた場合は、早めにご相談下さい。