症例紹介

Case5 異物誤食による腸閉塞

犬猫ともに異物の誤食(中毒性物質以外)で来院されることがあります。犬だとゴム、プラスチック製品、石、ボール、下着、タオルや布、カーペット、トウモロコシの芯などが多いようです。季節がら桃の種も経験があります。猫だとひも、糸などのヒモ状異物が多いですが、固形も誤食することがあります。

来院時、それがどのような形状でどこにあるかが治療の選択として重要です。
形状に関して、サイズが小さく丸いものであれば吐かせることができますが、ある程度の長さの棒や刺さりそうな針は吐かせることで問題が起きる可能性があるため、内視鏡や胃切開を検討しなければなりません。
どこにあるかも重要です。通常食べて1時間以内であれば胃内に残っている可能性が高く吐かせることができると考えられますが、前日の晩に食べたなど時間が経っているものに関しては胃から出て腸管に入っている可能性があり吐かせることができません。また結腸(腸管で最も太い部分で肛門の近く)まで通っていれば勝手に便として出てきます。

どこに異物があるかの検査は、金属や石であれば腹部レントゲン検査で判断することができます。しかしプラスチック、タオルなど布製のものは単純レントゲン検査では写りませんので、バリウム造影撮影をするか、超音波検査(腸管の拡張など二次性の変化で推測)、内視鏡検査、CT検査で探すか、最悪の場合試験開腹を行い探すしか方法がないです。

治療としては、第一にはお薬を入れて吐かせること(催吐処置)を検討します。吐かせることができない場合には内視鏡で摘出するか、胃切開により摘出する場合もかなり少ないですがあります。

異物が腸管までいってしまい、閉塞する場合があります。これを腸閉塞といいます。腸閉塞になると腸管の動きが止まりますので、食欲不振もしくは廃絶、頻回の嘔吐、排便停止、元気消失、腹痛などの症状が見られます。
以前は腹部レントゲン検査やバリウム造影検査が主流でしたが、現在では超音波検査で診断することがほとんどで、過去の文献でも高い正診率が報告されています。

今回、十二指腸に異物が詰まって腸閉塞を起こした猫さんをご紹介します。

当院を食欲不振、嘔吐、排便なしを主訴に来院されました。
腹部触診にて硬く腫れた腸管が触知されましたので、検査をおすすめしました。
超音波検査では、胃拡張と液体貯留、胃から出てすぐの十二指腸に直角ラインのシャドーを引く1.3cmの物質を認めました。

よって十二指腸の腸閉塞で、胃は閉塞前拡張と診断しました。
飼い主様と相談の結果、手術を行い摘出しました。

術後、翌日より少量のご飯から開始し、特に問題なく3日後には退院しました。

まずは異物を誤食しないことが一番ですが、中々防げない場合も多いと思いますので、食べた際にはなるべく早くにお問い合わせ下さい。また、腸管に詰まると頻回の嘔吐、元気消失、食欲がなくなったり、便が出なくなる場合が多いと思いますので、その際には診察に来ていただければと思います。

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