症例紹介

Case4 猫の腎臓腫瘤

猫の腎細胞癌は、腎臓に発生する悪性腫瘍の一種で、猫の腫瘍全体では比較的稀ですが、腎臓腫瘍の中ではリンパ腫に次いで多いとされています。通常は片方の腎臓に発生し、まれに両方の腎臓に発生することもあります。早期発見が難しく、症状が出にくい場合もありますが、食欲不振、体重減少、嘔吐などの非特異的な症状が現れることがあります。治療法としては、外科手術による腎臓摘出が第一選択肢となります。

過去の文献 (2023年腎癌を外科手術で治療した猫36例の報告)
・中央値年齢:11歳(範囲:5~17歳)
・体重減少:13頭(36.1%)、食欲不振(食欲低下):12頭(30.6%)
・腫瘍の最大径の中央値:4.6 cm(範囲:1.1〜9 cm)
・術後再発が疑われた猫:6頭(16.7%)、術後転移が疑われた猫:7頭(19.4%)
・全体の生存期間中央値(MST):203日(95%CI:84〜1379日)
・手術が成功して退院した猫のみの場合:MSTは1217日(95%CI:127〜1641日)
・術後退院できた猫では長期生存が期待できる

今回、早期に腎細胞癌を発見し摘出できた患者さんをご紹介します。

血尿の検査にて超音波検査を行ったところ偶発的に右腎臓腫瘤(1.3×1.5cm)が認められました。

超音波検査ガイド下で針生検を行ったところ上皮系細胞が得られ腫瘍が疑われました。幸いにも反対側の左腎臓に形態学的な異常はなく、腎臓数値も良好であったため右腎臓摘出後も腎機能は確保される可能性が高いと考えられました。飼い主さんにリスクをご説明した上で腎臓の摘出を希望されましたので、手術を行いました。

病理組織検査では腎細胞癌と診断されました。術後、腎臓数値の一過性の上昇は認められましたが、その後は低下し、転移、再発に関して経過観察を行っています。

今回、早期発見できたため転移や周囲臓器に癒着なく完全切除ができました。

健康診断は早期発見の一助になりますので、5才を過ぎたら是非とも健康診断を受けましょう!

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