犬の肺腫瘍は、ほとんどが悪性であり腺癌が最も多く、他には扁平上皮癌、組織球肉腫があります。無治療で経過すると、腫瘍は増大、転移、最悪の場合胸膜播種による胸水の貯留で呼吸困難により死亡します。
肺腺癌の治療は、肺葉切除が第一選択となります。どのくらいの大きさか、転移があるか、悪性度はどれくらいかで予後が変わります。大きさが7cm未満で転移がなければ術後約2年の生存期間が報告されていますが、大きすぎる腫瘍や転移がある場合、約半年の生存期間とされています。また悪性度が高いと手術を行なっても数ヶ月以内に進行します。
今回、早期に発見された肺腫瘍を切除した患者様をご紹介します。
別の病気でCT検査が必要となり、紹介病院で実施していただいたところ肺腫瘍が見つかりました。飼い主さんとご相談したところ切除をご希望されたため実施しました。


肺腫瘍は左側前葉前部に存在しており、左第4肋間からアプローチし、End GIAトライステープルという自動縫合器を使って肺葉基部で縫合切断、摘出しました。



左の二股の部分で挟み込んで縫合、切断します。
緑矢印が肺に発生した腫瘍です。
術後の病理組織検査では、腫瘍は完全切除されていました。術後は良好に経過しており、再発、転移は見られておりません。
この病気は、早期発見が難しくしばしば見つかった時には、サイズが大きかったり、転移していたりで手がつけられない状況になっていることもあります。今回の患者さんは紹介病院で早期に見つけていただいたおかげで良い経過が得られています。
健康診断は早期発見の一助になりますので、5才を過ぎたら是非とも健康診断を受けましょう!