症例紹介

Case1 犬の外耳道腫瘤

耳の入り口から鼓膜までの道を外耳道といいます。外耳道は、垂直耳道と水平耳道で構成されており、耳介で集められた音を鼓膜まで伝える役割があります。耳道内は表皮に覆われ被毛、皮脂腺、耳垢腺があります。

外耳道に発生する腫瘤は、耳垢腺や皮脂腺由来の腺腫や腺癌が代表的ですが、それ以外にも扁平上皮癌や未分化癌などの悪性腫瘍や炎症性増殖(炎症性ポリープ)が報告されています。耳道の腫瘤は、放っておくと例え良性であっても塞がることで外耳道または内部の中耳内耳に炎症が起き、強い疼痛、顔面神経麻痺、前庭症状(平衡感覚異常)、最悪の場合脳炎まで進行する可能性があります。

外耳道の手術にはいくつかの方法があります。

・外側耳道切除

垂直耳道を帯状に切開し反転させ水平耳道を開存させる方法です。垂直耳道が炎症もしくは腫瘤により狭窄した場合に選択され、水平耳道、鼓膜は残ります。

・垂直耳道切除

垂直耳道を全部切除する方法です。垂直耳道に悪性腫瘍が発生した際に選択され、水平耳道、鼓膜は残ります。

・全耳道切除

耳道を全て切除する方法です。これは悪性腫瘍が水平耳道に存在する場合、炎症による狭窄が全耳道に及ぶ場合、奇形や重度損傷などの場合に選択され、水平耳道、鼓膜は残りません。

今回垂直耳道に発生した腫瘤を外側耳道切除で治療した患者さんをご紹介します。

この患者さんは耳の入り口より耳道に発生した腫瘤が出るくらい大きくなり耳道を閉塞しており、それが原因で慢性的な耳道炎が起こっていました。手術は表面だけとっても根本が残り再発しては意味がありません。そこで外側耳道切除を行い腫瘤の根本を露出し、摘出しました。病理組織検査では、炎症性ポリープと診断されており、現在でも再発なく良好に経過しています。

真ん中の写真では、垂直耳道を切り開いて外に開いており(緑矢印)、このおかげで腫瘤の全容が確認できました。

耳道の腫瘤は、放っておくと外耳道の炎症だけではなく中耳炎、内耳炎まで発展する可能性があります。もし耳道にできものがあるのであればお早めにご相談下さい!

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